2020.12.10
路上の赤い封筒 − 冥婚
「冥婚」(めいこん)は生者と死者を結婚することです。「陰婚」(いんこん)、「鬼婚」(きこん)、「幽婚」(ゆうこん)、「死後婚」(しごこん)、「死後結婚」(しごけっこん)、「死霊結婚」(しりょうけっこん)などとも呼ばれています。英語では 「ghost marriage」、「spirit marriage」 と言われています。
伝統的な台湾の社会では、死後も魂があると信じられており、定期的に祭る必要があります。女性は結婚後に元の家族から出て、夫の家族の一員になります。死後、夫の子孫に祭られます。しかし、死んだ独身女性は元の家族に祭られることができずに、一部は「姑娘廟(独身女性の霊廟)」に位牌を送って祭られていますが、 一部は「冥婚」のためにお相手を見つけます。
この昔の台湾の文化「冥婚」、現在は少なくなっています。亡くなった女性がかわいそうと思う家族は死者の写真や髪など赤い封筒に入れて、道に置いて、その赤い封筒を拾った男性と結婚させるという風習がありました。中国語は「撿紅包」と呼ばれています。「撿」は拾うこと で、「紅包」は赤い封筒です。 また、運が悪い人は赤い封筒や銅貨などを見つけやすい場所に置いて、思わぬ人が拾ったら、不運を他人に移すという意味もあります。ですから、昔は子供に勝手に不審な落し物を拾わないように大人がしっかりと教えることがありました。
また、恋人が亡くなってしまった場合、両方の両親も理解した場合に結婚式を行います。台湾の映画「血觀音」はこのような物語を述べています。
死者の家族は赤い封筒を拾った男性に亡くなった家族と結婚させます。もし本当に結婚したくない回避方法もあります。お金を赤い封筒に入れて「素敵な相手が見つかれるように」と言えば拒否することができます。もし結婚することになったら、その後は簡単な結婚式でかまいません。
「冥婚」は死者の心を癒すことですが、逆に死者もできるだけ夫を守ったり、夢を叶えてくれたりします。お金持ちになるに限らず、体が元気になる場合もあります。ですから、生者は冥婚したいと思う状況もあります。常に病気になる人とか、占いで一生に二回目婚姻がある人とか、運が変わりたい人など冥婚の機会を探す場合もあります。
また、冥婚をした後で、もし死者が賛成すれば(神杯を使って聞きます。)、生きている人と結婚することもできます。一般的に死者を尊敬するために生きている妻は死者のことを「お姉さん」と呼んでいます。日常でお互いに理解してすべき礼儀をやって、死者は生きている夫婦を守っています。さらに、冥婚を数回目で受け入れた例もあります。台湾の嘉義縣東石鄉のある人は三回赤い封筒を拾って、三回冥婚を行ったことがありました。
日本の山形県の「ムカサリ絵馬」は冥婚に似てます。ムカサリは結婚の方言です。ムカサリ絵馬とは、婚姻できずに亡くなった人と架空の花嫁を描いた絵馬を奉納して、結婚するという文化です。戦後出征して帰ることができなかった未婚の息子を悼み、奉納する親が多いです。最近、事故や病気をはじめ、東日本大震災で亡くなった人を供養したい方も多くいます。
「冥婚」は怖いイメージがありますが、それだけではないこともわかっていただけたでしょうか。「冥婚」と「普通な婚姻」のどちらで、手を取り合い心を込めて互いに支え合い、共に幸せになるように頑張るということです。
Cover Photo Credit: tipsycat on VisualHunt / CC BY-NC-SA